煮色着色(煮込み, 煮上げ)

煮色仕上げ 太刀拵え


この技法は硫酸銅と緑青(ろくしょう)などを溶かした溶液に 銅および銅合金を入れ,薬液の中で煮込むことにより表面に酸化皮膜を形成させ耐候性を付け、独特な発色の表面に仕上げることである。四分一銀を煮色着色仕上げした金属は朧銀(ろうぎん、おぼろぎん)とも呼ばれることもある。
伝統技法

地板準備
切断、成形工程
成形工程
胴刷り工程
煮色着色 煮色着色 煮色着色 煮色着色
四分一銀の地板を用意する。 元来は銅三と銀一をまぜた日本固有の合金組成であるが,現代のものは銀の割合が低くなっている。地板は四分一銀ヤキ入り(ヤキとは金のこと)銀と銅の合金に金を1%入れた合金を使用する。 作品の寸法取り後、適切な大きさにカットした地板を作品の形状に合わせ整える。微妙な角度や曲がりは固定した地板をバーナー等で熱しながら少しづつ形を調整する。 柄、鞘部の炙り成形後、現物に合わせ細部を確認調整する。反り、背、腹の部分も正確に曲げる。 水分を含んだ刷毛や綿布等に炭粉(またはカーボランダム)をつけ煮色着色をしようとする表面を研磨する。胴刷りにかかる時間は作品の大きさや形によりさまざまだが、最低でも数時間程度要する。

胴刷り工程
煮色着色液
使用器具
着色方法
煮色着色 煮色着色 煮色着色 煮色着色
表面を鏡面状になるまで磨き上げた後、重曹などで十分脱脂する。着色前の脱脂処理の精度で着色状態の7割程に影響する。着色前の表面に大根おろしを用いると良いとも言われているが、これは作者によって異なる。 煮色着色液で使用する原料は緑青、硫酸銅と水である。それぞれを配合する割合は一定ではない。四分一銀の標準的な煮上げ配合の割合は水2Lに対し緑青5g、硫酸銅3.5g程と言われているが作品の目標色によって配合割合は随分異なる。 煮色着色鍋は鍍金処理などがされていない銅製を使用する。 また作品を煮る入れ物は竹製のコーティング処理等のされていない籠を使用する。持ち手も銅線等で作る。 表面の胴刷り鏡面状に仕上げるまでに煮色液を一旦沸騰させ冷ましておく。 再度温めた煮色液の中に作品を入れ過熱し沸騰させる。これで徐々に着色される。

着色工程
仕上げ工程
色止め
着色地板装着
BGMが流れます。
煮色着色 煮色着色 煮色着色
加熱中の煮色液原料の沈殿を防ぐため絶えず鍋の中の籠を上下に揺らし続ける必要がある。 着色開始から約5分後作品を煮色液から取り出し着色状態を確認するが作品の表面が乾きやすいので直ぐに冷水で冷やし乾燥を防ぐ。これらを怠ると変色、ムラの原因となる。 着色状態を数回確認しながら概ね30分から1時間程度煮込こむと着色は完了する。 目標色の着色が終了した後、軽く表面を重曹で中和させる。その後柔らい布やヘヤードライヤーで軽く乾かす。 元来は着色終了後、作品表面に蜜蝋あるいはイボタ蝋を塗り色止めがなされていたが 近年では無色のカーワックス又はクリアラッカー等を軽く吹きかけ色止めする場合もある。 色止めが乾いたことを確認後、太刀拵えの金具類を装着調整する。
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